*1.3.白紙の状態からの作図
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**1.3.1 ねらい - これまでの作図は, 「三角形」を出発点にしてきました。 - しかし, 通常「新規」から作図する場合には, 最初はなにもありません。 - そこから出発する作図について検討してみましょう。 ----- **1.3.2 作図 = 「いくつかの独立変数」 + 「従属変数」 - GCでの作図は, 図形を関数として分析することです。 - 三角形を「動かす」ためには, 次のような考え方をします。 -- 独立変数として, 点A,B,Cがある。 -- それらに対する従属変数として, 線分AB,BC,CDがある。 -- すると, 独立変数(A,B,C)を動かせば,それに付随して, 三角形が動く。 - そのため, GCでの作図の出発点は, そのような「独立変数」に相当する「いくつかの点」を画面上にとること。 - そして, それに続いて, いろいろな「従属変数」としてのパーツを順次積み重ねていくという手順で構成します。 - そのため, これまでの作図と比較すると, 「最初にいくつかの点をとる」ところだけが追加されるだけなのです。 ----- **1.3.3 具体的な様子 -たとえば, 三角形と角の二等分線3本によって内心について調べる図をつくる場合を考えましょう。 -具体的な様子を以下に示します。 |手続き|図|備考| |まず, 何か描かれている状態で「新規」|%const-03-01.png|| |ダイアログが出る|%const-03-02.png|| |拡大(okを押す)|%%const-03-03.png|| |白紙の画面が出る。|%const-03-04.png|| |クリック(タッチ)すると点Aができる|%const-03-05.png|| |クリック(タッチ)すると点Bができる|%const-03-06.png|| |クリック(タッチ)すると点Cができる
点の追加はおしまい|%const-03-07.png|「戻る」か「右クリック」か「Escキー」で| |「線分/多角形」|%const-03-08.png|| |「多角形」|%const-03-09.png|| |Aを選択|%const-03-10.png|| |Bを選択|%const-03-11.png|| |Cを選択|%const-03-12.png|| |もう一度Aを選択|%const-03-13.png|| |三角形のできあがり |%const-03-14.png|| |続いて「半直線」|%const-03-15.png|| |「角の二等分線」|%const-03-16.png|| |C,A,Bと指定して角Aの二等分線|%const-03-17.png|| |角Bの二等分線|%const-03-18.png|| |角Cの二等分線でできあがり|%const-03-19.png|| ----- **1.3.4 TIPS(ちょっとしたこと) -(1) 間違ったときには(Undo) -- つい違う作図をしてしまった, という場合があります。 -- そういうとき, 「最後の作図の手続きは抹消する」ことが適切です。 -- 「作図」→「undo」を選択してください。 -- あるいは, Ctrl + U キーを押してもかまいません。 -(2) 同じ作図手続きの繰り返しには(Redo) -- 上記の手続きでは, 「角の2等分線」を3本書いています。 -- 「同じ作図の手続き」という場合には, 「作図」→「Redo」が便利です。 -- 特に,キーボードを使うときには, Ctrl + R キーで対処するとちょっと早く作業ができます。 -(3) 座標軸がある方がいいときには, -- 「設定」→「座標軸」で座標軸あるいは格子点を描画します。(なし→座標軸→格子点→なし のサイクロ) -- Ctrl + A キーでも使えます。 -(4) Ctrl キーを押しながら点を動かすと格子点上に -- 最初の形を, 長方形など, 特別な形にしたいときには, 格子点上にすると便利なことがよくあります。 -- そうしたいときには, Ctrl キーを押しながら動かすといいでしょう。 -- あるいは, 下の左から2番目のアイコンをクリックして, 赤くしておいても点が格子点上に制約されます。 -(5) 点が動かない方がいいときには, 「編集」 -- 「編集」→「点」→「変形可能性」で, x にすると, 動かなくなります。 ----- **1.3.5 練習問題 -以下に示す図を独力で作図してください。(番号は飛んでいますが, それぞれ, ちょっと難しいので, 3.5に移動したので, 空白になっているのです。 |(2)|#00037-3角形-4心|△ABCの外心, 内心, 重心, 垂心の4つの心を作図せよ||@@http://iijima.auemath.aichi-edu.ac.jp/mp4/show2.htm?file=rc-const-03-04-02,動画での解説| |(4)|#00061-最短経路1|図のように2定点A,Bと直線CDがある。Aから直線CDにタッチしてからBに行く経路をつくれ。|直線CD上に点Pを追加する。(あるいは自由な点を作って束縛条件を変更する。|@@http://iijima.auemath.aichi-edu.ac.jp/mp4/show2.htm?file=rc-const-03-04-04,動画での解説| |(5)|#00062-最短経路2|図のように2定点A,Bと2直線OX,OYがある。AからOXにタッチし, さらにOYにタッチしてからBに行く経路をつくれ||@@http://iijima.auemath.aichi-edu.ac.jp/mp4/show2.htm?file=rc-const-03-04-05,動画での解説|
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|(7)|#00073-三角形-内接三角形-周|△ABCの3つの辺BC,CA,AB上にそれぞれD,E,Fをとる。△DEFの周を測定せよ。||@@http://iijima.auemath.aichi-edu.ac.jp/mp4/show2.htm?file=rc-const-03-04-07,動画での解説|
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|(8)|#00084-四角形-三角形-面積|図のように,ABCDの面積とABEを作図し, 面積を測定せよ。||@@http://iijima.auemath.aichi-edu.ac.jp/mp4/show2.htm?file=rc-const-03-04-08,動画での解説|
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|(9)|#00094-2正方形|点Bを共有する2つの正方形を作図せよ。|
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|(10)|#00105-3正方形-3正方形|△ABCのそれぞれの辺の上に正方形をおき, さらにその外側にも図のように正方形をおけ。|
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|(11)|#00098-3正3角形-3線分|△ABCの3つの辺の外側に図のように正三角形をおき, 3つの線分AE,BF,CDを結べ。|
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|(12)|#00099-3正3角形-3重心|△ABCの3つの辺の外側に図のように正三角形をおき, それらの正三角形の重心を結べ。|
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|(13)|#00100-4正方形-重心|四角形ABCDの4つの辺の外側に図のように正方形をおき, それらの正方形の重心を結べ。|
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----- **1.3.6 「編集」機能の利用 ***1.3.6.1 「編集」でできること - 点, 直線など, GCの中で構成する幾何的対象に関して, さまざまなプロパティ(属性)があります。 - 標準的な作図では, それらはそのまま使えばいいのですが, たとえば, 点の名前を変えたいとか, 点の表示の仕方を変えたいなど, 何かを変えたいというときに使えるのが, 「編集」機能です。 - 基本的に, 「編集」で「種類」を選択し, 対象を選択すると, その対象に関するプロパティを右側で表示し, 編集できるようになります。 *** 1.3.6.2 「点」の編集 - 標準モードにおいて, 編集可能なのは, 「名前」, 「色」, 「軌跡の色」, 「表示形式」, 「変形可能性」です。 - 「名前」, 「色」, 「軌跡の色」, 「表示形式」を編集したい場合やその手続きに関しては, ほぼ推測できると思います。 - 点は, 独立変数として「動かせる」ものと, 従属変数として「他の対象の位置などに応じてきまる」ものがあります。独立変数として「動かせる」場合であっても, たとえば「長方形となる位置」に配置した後, 「動かしたくない」場合もあります。 - そのようなときに, 「独立変数ではあるけれどもマウスやタッチで動かせないように設定したい」という場合に, 「変形可能性を x にする」ことになります。 - 「色の編集」に関して, 「無色」を選択する場合というのは, 「作図の手続き上, 必要なのだけれども, その存在を見せたくない」という場合です。具体的な例は後で紹介いたします。 *** 1.3.6.3 「点の束縛条件」の編集 - 点をマウスやタッチで動かせる場合に, 普通は自由に動かせるのですが, 動かし方を制限したい場合があります。その制限の仕方を「束縛条件」と表現しています。標準モードでは, 次の中から選択することができます。 -- 自由, 点(と一致させる), 直線上, 円上, 格子点上, 最近接対象上 - 長方形の周上を動かしたいというような場合, 「最も近接対象上」にするといいでしょう。 *** 1.3.6.4 「直線」の編集 - 直線, 線分, 半直線は一括して「直線」という対象の中で, 表示形式で分類しています。 - そのため, 「直線」に関して編集可能なプロパティは, 次のものになります。 -- (名前), 色, 軌跡の色, 表示形式 -- なお, 直線が2点を結んで構成されている場合は, その2点の名前をもとに直線の名前を構成するので, 編集で修正しても, 元に戻ってしまいます。 *** 1.3.6.5 「円」の編集 - 円に関しては, (名前), (円周の)色, (円周の)軌跡の色, 内部の色を編集できます。 *** 1.3.6.6 「弧, 扇形」の編集 - 弧, 扇形に関しては, (名前), (弧の)色, (弧の)軌跡の色, (扇形の)内部の色, 表示形式(実線, 点線)を編集できます。 *** 1.3.6.7 「多角形」の編集 - 多角形に関しては, 内部の色を編集できます。 *** 1.3.6.8 「角」の編集 - 角に関しては, 色を編集できます。 *** 1.3.6.9 「変数」の編集 - 変数に関しては, 表示の有無を指定できます。 - 角のマークだけがほしい場合には, 角を測定し, その変数(測定値)を非表示にすることで対応できます。 **1.3.7 ちょっとした工夫が必要な作図のケーススタディ |(1)|#00044-正3角形2つ-b|3点A,B,Cに対して, AB, BCを一辺とする正三角形を図のように作り,AE,CDを結んだ図|正三角形は2点を基に作れる。|@@http://iijima.auemath.aichi-edu.ac.jp/mp4/show2.htm?file=rc-const-03-04-01,動画での解説| - 最初, A,B,Cは一直線上にあるようにしておきます。(直線の上に束縛する必要はない) - すると, この図形の中に1組の合同な三角形があることに注目することで, 一組の線分の長さが等しいことを証明できます。 - 「ちょっと回してみるとどうなるかな?」と尋ねたいのです。 - そのため, A,B,Cを「一つの直線上にとる」のではなく, 「3点が偶然一直線上にあるように並べてあるけど,自由に動かすことができる」ようにしておく方がいいのです。 |(2)|#00060-直角二等辺三角形-2垂線|直角二等辺三角形ABCと動点Pがある。直線PAにB,Cから下ろした垂線の足をそれぞれD,Eとする。|@construction_TIPS.htm, TIPS(1)|@@http://iijima.auemath.aichi-edu.ac.jp/mp4/show2.htm?file=rc-const-03-04-03,動画での解説| - 動かしたいものは, Pだけで, ABCを動かす必要はありません。 - そういうときは, △ABCは直角三角形になるように点をとり, 「固定」しておくだけで十分です。 -- 点A,B,Cを適当にとります。 -- 「座標軸」を表示します。(「設定」→「座標軸」あるいは, Ctrl + A キー) -- 格子点上だけに動きを制限して, A,B,Cを動かし,直角二等辺三角形になるようにします。 -- 下の左から2つ目のボタンを on にすると, 格子点のみに制限されます。(Ctrl キーを押しながら動かしてもよい。) -- たとえば, 「固定」するためには, 「編集」→「A」→「変形可能性 を x にする」 |(3)|#00130-ブランコ|図のように, ブランコのシミュレーションをつくれ。|隠れた円を使おう| - ブランコの秘密は何でしょう。 - それは, 向かい合う2組の辺の長さが等しいということです。 - 2組の辺の長さが等しくなるようにするには, 「同じ半径の円」をかき, その上に点をとり, 結ぶという方法で, 一定の長さの線分をつくるということをします。 - そして, 必要のない円は, 「消す」のです。 -- 編集→円→色を無色にする。 |(4)|#00071-2円2直線|2つの円A,Bが2点C,Dで交わっている。点Cを通る直線と2円との交点をA,G, 点Dを通る直線と2円との交点をF,Hとせよ。||@@http://iijima.auemath.aichi-edu.ac.jp/mp4/show2.htm?file=rc-const-03-04-06,動画での解説| - 2円をつくり, その交点をC,Dとします。円A上に点Eをとり, CとAを通る直線をかき,その直線と円Aとの交点をとると, 2点F,Gができますが, 片方はAと重なっているので, その点の名前をAに変えておきます。 -- 編集→点→名前を変える -- あるいは, 名前を削除して空白にしてしまうのも一つの手ではあります。色を消して表示しないというのも一つの手ではあります。 **1.3.8 教材開発のための作図に向けて - これまでの作図の仕方をマスターできれば, 具体的な作図の手続きとして何があるかを, GCのメニューをみながら作業をするだけで, 初等幾何的な図形の問題について, かなりの範囲の問題を作図することができるようになるでしょう。 - しかし, その図は, たとえば初等幾何的な定理の正しさを確認するための図として使えるということであって, 生徒に対して「解説」をするのには使いやすくても, 生徒がその図を基に調べることによって, いろいろなことを発見するのに適しているかどうかは別問題です。 - 教材開発のための作図を考える上では, さまざまな別の候補を考えてみて, それぞれの図では生徒の数学的活動がどう変わるのか, またどこで何を発見可能なのか, どういうワークシートを作成するのか, そこに書き込んだことをどう拾い上げることができるのか, など, 授業の流れを想定して作ることが不可欠です。 - それらに関しては, 基礎編の範囲を越えることなので, 応用編で続きを検討することにしたいと思います。